第22章 ほんのひと目で心を奪われたあの人

西野亮平はその様子を見て、慌てて背後から声を投げた。

「社長、どちらへ?」

男は答えない。淡々と店を出ていき、残ったのは気品だけを纏った背中だった。

喫茶店を出た彼は、隣のケーキ屋へ回り、香澄の前で足を止める。

それから骨張った、指の形がはっきり分かる手で、テーブルをトン、トンと二度叩いた。

手首の数珠の飾りが、その動きに合わせて小さく揺れ、ちょうど香澄の視界をかすめた。

香澄の視線が吸い寄せられるように動き、反射的に顔を上げる。

そこにいたのは、あのおじさんだった。

澄んだ瞳の奥が、ふっと揺れる。

――この間、自分を助けてくれた、あのかっこいいおじさん。

男もその変化に...

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